死期を悟った患者さんに、その日限りの単発派遣ナースが向き合う時
先日、日野原重明先生が亡くなりました。
個人的なことで恐縮ですが、わたしも学生時代から予防医学・代替医療・チーム医療にとても興味がありまして、その流れで大学も単科系ではなく総合大学を選んだという経緯がありまして・・・
などという無名の個人の進路選択にも影響を及ぼしているくらい(笑)の、このジャンルの先駆者である日野原先生の偉業には、本当に敬意しかないです。ご冥福をお祈りします。
その流れで日野原先生の昔のエピソードが紹介されているのを目にしまして、ちょっと思い出したことがあるので例によってとりとめなく語りたいと思います。
まずその「エピソード」のご紹介。
医師になったばかりの日野原先生、担当していた患者さんが「わたしはもう死ぬんだと思います」と言われたのに対して「いや、きっとよくなるから、元気をだしなさい」と励ましたそうです。
しかし患者さんはそのまま亡くなり、「死を受容している患者さんに対して励ますことしかできなかった、ほかにどうすればよかったのか」と悩んだところが医師としての原点・・・というお話でした。
(記憶を頼りに書いているので言葉などはこの通りではないと思います、すみません)
難しいですよね・・・死と向き合うこと。
しかもね、これって、単発派遣で介護系のお仕事やってると頻繁に遭遇するものでもあるんです。
わたしは訪問入浴が長かったので、特にがん末期の在宅療養の利用者さんに出会うことが多かったです。
こちらが単発その日1日限りのナースであっても、利用者さんにとってはそれが人生最後の入浴なのかもしれないわけですよ。
単発派遣の看護師に、何ができるのか?
まあハッキリ言って何もできないです、でも何もしなくていいとも思えないのです。
まずできるのは、看護師がいるので安心して入浴してもらえること。
そもそも在宅で訪問入浴を使っているかたって、本人がお風呂好きであることも多いので「多少具合よくなくてもお風呂には入れて欲しい」って言われることも多いです。
時間を短くするとか浅めに入れるとか、なんとか実施できる方法を考えるという努力がひとつ。
もうひとつが、死期をすでに悟っている本人や家族になんて声をかけるか。
わたしはごく当たり前の挨拶ですが、「お疲れ様でした」って言うようにしていました。
すごく印象に残っているのが、がん末期のご本人から「明日から入院するんだけど、多分もう帰ってこれないから今日はどうしても風呂入れて」と言われた時・・・
ああ、死を受け入れてらっしゃるんだな・・・って思いました。
もう何もいうことはないというか、軽々しく何も言えなくて普段通り(といっても5回くらいだったのですが^^;)楽しい雰囲気でサービスを実施して、最後に帰る前に「お疲れ様でした」と伝えました。
いつも通りの挨拶、入浴終えてお疲れ様という意味に加えて、生きることそのものに対してお疲れ様という気持ちを入れたつもりです。
伝わったんじゃないかな、と思います。
それ以後も、なんどもこの「お疲れ様」を言ってきました。
これが正解のことばなのかは今でもわかりません。
ただ、介護現場に看護師としてかかわる以上、生死と真摯に向き合う気持ちは忘れずにいたいな、と思います。
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